【質問】 小・中学生の体力向上についてお伺いいたします。
社会の関心が子どもたちの学力の低下、規範意識のモラルの低下に向けられておりますが、子どもたちの生きる力にかかわりの深い体力・運動能力の低下も深刻な状況にあります。文科省が昭和39年より行っている「体力・運動能力調査」によりますと、運動能力は昭和60年ごろを境に低下の一途をたどっております。室内でのゲーム遊びなどが主流のため、外遊びの減少が子どもたちの運動不足、やがては体力・運動能力の低下に拍車をかけていると山梨大学の中村助教授は指摘しております。日本子ども学会の調査では、外に出やすい晴れた秋の日でも、一人きりで家の中で過ごす子どもが7割を占めたとの報告もあります。
体力は人間の発達・成長を支え、創造的な活動をするために必要不可欠なものであり、体力・知力・気力の三つが一体となり、健康的な活動ができるものと言われております。しかし、現実的に子どもの体力は低下の一途をたどっており、子どもたちの健康への悪影響、気力の低下などが懸念されております。このまま成人した場合、ゆくゆくは病気の増加や気力の低下によって社会を支える力が減少、ニート予備層が増加し、その結果、少子高齢社会にも大きな影響を及ぼすと考えられております。
最初に、練馬区では、子どもの体力・運動能力の低下、そしてその影響・課題についてどのように認識されているのかお伺いいたします。
2001年度から10年間の国のスポーツ全般にわたる骨子をまとめた「スポーツ振興基本計画」が、本年9月に後半5年間の方針が見直され、今後取り組むべき大きな課題の一つとして「子どもの体力向上」が挙げられました。子どもの体力低下について、国としても真剣に考え始めたわけであります。平成19年度以降、更なる国としての具体的な動きが出てくるのではないかと予想されております。
そこで、練馬区として、子どもの体力・運動能力の低下原因等をより明らかにするとともに、今後の体力向上施策の方向性について総合的に検討するための「(仮称)子どもの体力研究委員会」を設置すべきであると考えます。ご所見をお伺いいたします。 次に、小・中学校の新体力テストについてお伺いいたします。
新体力テストは、測定を実施すること自体が目的ではなく、結果を的確に分析し、子どもの生活改善に役立てたり、教師が教育課程の編成に反映させたりするために実施しております。練馬区では、小学校36校、中学校32校で新体力テストを実施しておりますが、全校実施には至っておりません。
小学校高学年は、一生のうちで最も心身が成長する時期のスタートにあたります。骨成分の基礎形成や筋肉や内蔵に至る機能発達の重要な時期にあたり、この時期にどう体力をつけていくかが重要になるわけであります。健康体力づくりを考えるにあたっては、子どもたちの現状分析は必要不可欠であります。よって、全小学校の高学年で新体力テストを実施すべきであります。ご所見をお伺いいたします。
また、中学校では、ほとんどの学校で新体力テストを実施しているものの、その分析を業者に委託し、費用を保護者が負担している状況であります。小・中学校の新体力テスト実施にあたっては、財政的な負担を区として支援すべきであります。ご所見をお伺いいたします。
小・中学生の体力低下が続いていることについて、日本体育協会スポーツ科学研究室の森丘保典研究委員は、「時間」「空間」「仲間」という「三つの間」の減少が大きいと指摘しております。今の子どもたちには外遊びをする「時間」がない。また、昔のように、外遊びをできる「空間」も減ってしまった。防犯上も大変厳しい。そして、お互いに忙しいので一緒に遊ぶ「仲間」もいない。このような子どもたちを取り巻く生活環境の変化は、私たち大人の意識を変えていかねばならない状況であります。東京成徳大学子ども学部の深谷昌志学部長は「子どもたちだけの聖域を設け、みんなで遊ぶことができる条件の整備までは、周囲の大人の協力が求められる。週2日程度は、どの子どもにも夕方の自由な時間を保障し、更に子どもの安全性を見守るための体制づくりを進めることが大切である」と訴えております。特に、行政として、子どもたちの外遊びのための「空間」の確保には責任を持つべきでありましょう。そのようなことから、第三回定例会でわが党から主張させていただいた、全児童を対象とし、体育館・グランドなど学校施設を活用した放課後の居場所づくりを進めていくことは、子どもたちの体力向上のためにも、人間関係をつくる力を身につけさせるためにも、大きな成果が期待されます。一刻も早く事業展開を図っていくべきであります。ご所見をお伺いいたします。
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【区の答弁】平成18年第4回定例会にて
薗部俊介教育長: 練馬区の子どもの体力・運動能力の現状と影響・課題についてであります。
体力は、生活するうえでの気力の源であります。体力が向上することで、自信や根気強さなどの気持ちが育ち、高まります。また、脳が刺激され、学習にもよい影響を与えると考えられています。
文部科学省の新体力テストによると、子どもの体力は年々低下しており、練馬区においても同様の傾向が見られます。教育委員会といたしましては、体力低下は子どもの活力ある健康な生活が脅かされ、結果として肥満傾向の増加、生活習慣病の低年齢化が進むなどの指摘もあり、重大な課題であると認識しております。
次に、体力向上検討委員会の設置についてであります。
教育委員会では、確かな学力の向上、豊かな心の育成とともに、体力向上が学校教育を充実するための大きな一つの柱であると考えております。そのためにも、体力向上検討委員会は不可欠であり、来年度設置に向けて着々と準備を進めているところであります。
検討委員会では、子どもの体力の現状分析を行い、子ども自らが健康を考え、進んで体力づくりを行うための体育授業のあり方や指導資料等の調査・研究を行ってまいります。
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