No.50 障害者アートについて

 文化芸術振興への取り組みとしてアール・ブリュットに代表される障害者アートについて質問致します。アール・ブリュットとは、フランス語で加工されていない、感じたままを表現する、生の芸術という意味で、主に知的障害者や精神の病がある人などが創作する絵画・彫刻などの芸術であります。スイス・ローザンヌ市には、世界で唯一のアール・ブリュット専門の公立美術館があります。また日本では滋賀県近江八幡市にアール・ブリュットを専門とするボーダレスアートミュージアムNOMAという日本初の美術館が2004年に開館いたしました。
 欧米においては、障害者アートの取り組みは、20世紀初頭から始まっておりますが、日本では障害者アートの見方が、教育的効果や福祉の向上への取り組みとして強く結びつき、芸術的な才能があってもそれを理解する人が少なく、さらに自由な芸術作品の制作を通じた自立を促すという考えが生まれてこなかった歴史があります。しかし、日本でも先の美術館の開館や一昨年にはアール・ブリュット美術館のコレクションと日本の作品を同時に紹介する展覧会が東京など国内3カ所で開催されました。また全国各地の施設団体で障害者アートが取り上げられるなど特色ある取り組みが進んでおります。私は、こうした芸術がより活発となり、さらに多くの方の理解が進むよう願う一人であります。そこで以下質問いたします。

 最初に、アール・ブリュットに代表される障害者アートについて区としてのご認識をお聞かせください。
 練馬区では、障害者福祉大会を開催し、障害者福祉の向上に功績のあった方や障害をもちながら地域社会で活躍されている方を表彰されており21年度で33回となります。本年度は援護功労者5名、地域活躍者3名と1グループでありました。このような地域での地道な活動を顕彰していることを高く評価いたします。被表彰者の中には、エイブルアート受賞巡回展(個展)を開かれた方もいらっしゃいました。全国には、障害者施設同士が連携したり、特別支援学校の美術教師が協力し作品づくりの現場を運営している例もあり、作品制作現場の環境づくりが大変重要であります。そのために、まず区内の障害者アートの作品の調査を進めていくべきであると考えます。優れた作品の作り手の所在を確認することや、福祉施設等における芸術活動の実態を調査することは、障害者の芸術創造活動の普及啓発を推進するためにも大変重要であると考えます。区の御所見をお伺いいたします。  

 文化芸術振興に力を入れている練馬区こそ障害者アートを積極的に発信する環境づくりを進めていくべきではないでしょうか。全国で作品の調査・発掘を進める団体・機関などとの連携を進めるとともに、練馬区立美術館を使用し、区内での作品紹介の実施を要望するものであります。併せて御所見をお伺いいたします。

 練馬区は、平成17年の練馬区文化芸術の振興に関する基本方針の中で、区内の大学などとの連携を深めていくことを述べております。そのひとつとして、障害者アートをテーマとしたフォーラムの開催や大学生・教員が特別支援学校等と交流し芸術分野に参加する枠組みの構築を連絡会の中で検討していただき、障害者アートの裾野を大きく拡げていただきたいと考えます。区の御所見をお伺い致します。
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【答弁】
志村豊志郎区長:
 まず、アール・ブリュットに代表される障害者アートについてであります。
 障害者アートについては、これまでは主として教育的効果や福祉の向上の視点でとらえられていました。しかし、近年では、知的障害者や精神障害者らの絵画や陶芸を芸術として評価する動きが広がりを見せております。
 私は、障害者の創作活動は、自己を表現するとともに、自立と社会参加を促進するうえで大きな力を持つと認識しております。

 次に、区内の障害者の芸術作品の調査などについてであります。
 区では、これまでも障害者の作品やそのつくり手を調査し、活躍が顕著な方を障害者福祉大会において顕彰しております。このことによって障害者の芸術活動を推進し、自立と社会参加を促進してきたところであります。
 今後とも、障害者団体や福祉施設等と連携を図り、芸術活動の実態を更に調査するとともに、環境づくりに努めてまいります。

 次に、全国で調査、発掘を進める団体、機関との連携および区立美術館での作品紹介の実施についてであります。
 障害のある人たちのすぐれた作品を紹介し、広く区民に障害者アートに対する理解を深めてもらうことが、障害者の社会参加を更に促していくものと考えております。そのため、障害者地域生活支援センターなどの施設を活用し、多くの区民に鑑賞していただいております。
 今後は、広く障害者アートを収集する団体、機関などとの連携を図るとともに、区立美術館などへの展示等も視野に入れ、積極的に鑑賞機会の拡大に努めてまいります。

 次に、区内の大学との連携による障害者アートフォーラムなどの開催や、大学の教員、学生の参加による特別支援学校等との交流についてであります。
 区は文化芸術を振興するため、教育委員会、練馬区文化振興協会、日本大学芸術学部、武蔵大学および武蔵野音楽大学とともに文化芸術振興推進連絡会を設置し、連携して事業を行ってきております。
 ご提案の区内の大学との連携による事業につきましても、この連絡会の中で検討してまいりたいと考えております。


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